ヒース・レジャーがニューヨークで急死

 MTV News

現 地時間の22日午後、ニューヨーク市内のアパートの一室で、アカデミー賞ノミネート俳優のヒース・レジャーが遺体で発見された。享年28歳。『ブローク バック・マウンテン』や『チョコレート』といった作品で高い評価を受けてきたレジャーは、今年公開が予定されている『バットマン ビギンズ』の続編「The Dark Knight」への出演が注目されていた。

ニューヨーク市警のスポークスマンはMTV Newsに対し、レジャーの遺体は午後3時30分頃に発見されたと伝えた。死因は正式には発表されていないが、CNNはニューヨーク市警が薬物過剰摂取の 可能性を推測していると報じている。「ベッド付近で錠剤が発見されました」と警察のスポークスマン、ポール・ブラウン氏はCNNに語った。「過剰摂取の可 能性が考えられていますが、まだ確定はされていません」。警察のスポークスウーマン、バーバラ・チェン氏は、これらの錠剤は市販の睡眠薬のようだと述べ た。

ブラウン氏によれば、家政婦がマッサージ師の予約の時間にレジャーを起こしに行ったところ、既に反応が無かったという。米「ニューヨーク・タイムズ」紙はニューヨーク市検視局長のスポークスパーソンからの情報として、検視解剖が現地時間の23日に行われると報じた。

レジャーには元婚約者で女優のミシェル・ウィリアムズとの間に、2歳になる長女マティルダ・ローズちゃんがいる。

ボブ・ディランについて描いた新作「I'm Not There」でレジャーを演出したトッド・ヘインズ監督は、「これは想像を絶する悲劇です。ヒースは真のアーティストであり、非常に繊細な男で、才能があ り、年齢以上に賢い探険家でした」と語った。「この世にあんなに良い人はいません」。

ヒース・レジャーはオーストラリア・パースで、教師とカーレーサーの両親の間に誕生。エミリー・ブロンテの名作「嵐が丘」の登場人物から名づけられた。 ジュリア・スタイルズと共演した、シェイクスピアの著書を原案にした「10 Things I Hate About You」（1999、日本未公開）で人気若手俳優の仲間入りを果たし、その後、『パトリオット』や『ROCK YOU!』、『ブラザーズ・グリム』などに出演して、不動の座を獲得した

『パトリオット』でレジャーと共演したメル・ギブソンは、有望な若手俳優としての彼を振り返った。「彼には物凄く期待していた。ちょうど上昇中だったのに、あの若さで命を失うなんて悲劇だ」と彼は文書を通じてコメントした。

レジャーが最も高い評価を受けたのは、2005年に公開された『ブロークバック・マウンテン』だろう。アン・リー監督のこの作品で、彼はジェイ ク・ギレンホールが演じたロデオ・ライダーと禁断の恋に落ちるホモセクシャルのカウボーイ、エニスを好演。評論家に絶賛され、一躍世間にその名を知らしめ た。この作品でレジャーは、ニューヨーク映画批評家協会賞の最優秀主演男優賞を受賞。ゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞でも同部門にノミネートされ た。

レジャーはとりわけ、その「内側の」演技に高い評価を得た。彼が演じたエニスは口の端から話し、動作は堅く、葛藤を感じさせた。レジャーはMTV Newsに対し、エニスとの旅は「自己発見」だったと語っていた。

「彼を演じる役者として、僕は彼の葛藤が本当に何だったのかを発見するべく、時間をかけて研究したんだ。彼が感情を表すこと、愛することを阻止し ていたのは何だったのか? 僕が辿り着いた結論の1つは、彼が彼自身と戦っていたということだった」とレジャーは断言した。「エニスはこういった質問を自問するほど自己認識がなかっ た。だから、彼は僕が彼を知っているほど、自身を知らなかったんだ」。

大絶賛の嵐の中、レジャーはMTV Newsに対し、『ブロークバック・マウンテン』に出演したことの結果として、同作を将来的な自己成長の跳躍板にしたいと語った。

「人として成長すると同時に、役者として成長するんだ」と彼は自身へ向けられた称賛について述べた。「その両面で進化し続けたいと思っている」。

新作「I'm Not There」では5人の役者たちと並んでボブ・ディランに扮したレジャーだが、今年最も注目されていたのは『バットマン ビギンズ』の続編「The Dark Knight」でのジョーカー役だった。数ヶ月に渡る推測を経て、レジャーは2006年7月にジョーカー役に抜擢された。当初、彼はジョーカー役に不適切 だという声がネットを騒がせたが、先日予告編映像が初公開され、世界中のファンや漫画家たちが彼の演技を絶賛した。

米ワーナー・ブラザーズ社の社長兼COOアラン・ホーン氏と、米ワーナー・ブラザーズ・ピクチャー・グループの社長ジェフ・ロビノフ氏は、レジャーの死について「打ちのめされている」と文書を通じてコメントした。

「弊社はこの度の悲劇的なニュースに、愕然とし、打ちのめされています。エンターテインメント・コミュニティは非常に大きな才能を失いました。ヒースは卓越した俳優であり、非常に優れた人物でした」。

レジャー自身は、1974年に26歳の若さで亡くなったイギリス人のシンガー・シングライター、ニック・ドレイクを称賛していた。ニック・ドレイ ク財団の関係者によれば、レジャーは最近、再発表されるドレイクの楽曲「Black Eyed Dog」のミュージックビデオの撮影と編集を行ったという。未公開のビデオは殺風景なモノクロ映像で、主にレジャーが自身を撮影した様子が含まれていると いう。ビデオの最後に、レジャーはバスタブに自ら沈んでいく。「Black Eyed Dog」は、ドレイクが薬物過剰摂取で亡くなる前に、最後にレコーディングした曲だった。